桜の季節に。


今でもときどき、大好きなおじいちゃんの夢をみます。
あたたかい日と肌寒い日を繰り返しながら、少しずつ季節を交代してゆく3月は、
私にとっては少し寂しい季節。


おじいちゃんが永い眠りについたのも、3月でした。
今日は、どういうわけか『ぼんさいじいさま』のお話を読みたくなって、
ひんやりした書棚から引っぱりだしてきました。


宝物の、たくさんのぼんさいに囲まれた、あるあたたかい春の朝、
ぼんさいじいさまのもとに、お迎えが来るのです。
数あるぼんさいのなかで、いちばん見事に咲いた、しだれ桜のぼんさいを
うっとり眺めていた朝、でした。


突然お迎えがやってきたのにもかかわらず、それをものすごく自然に受けとめ、
出かけるおじいさんの姿が、私の大好きだったおじいちゃんに重なります。
大切に、共に生きてきた宝物の、満開を見ることができたからなのでしょうか。


おじいちゃんがすっと目を閉じた瞬間も、まだはっきりと思い出せます。
この絵本のおじいちゃんのように、桜の花びらの舞うなか、ゆっくりゆっくりと
歩いていったのかなぁ…そんなことを、何年たった今も考えています。