ピアノの思い出。

さえがピアノを習い出してからはや4ヶ月。
まさかもう発表会に出ることになってしまうとは。
きれいなドレスへの憧れと、「子どもと連弾なんて思い出になりますよ」
との先生のひと言から、「でます!弾きます!」ということに。


ちいさな指が鍵盤から落っこちてしまわないかと、いつも傍で見ています。

ピンク色の妖精のようになった娘に、もうその姿だけで涙がでそうでした。
ドレスを着ると、不思議なもので、背筋がピンとしたり、ふたつの手が
すっと前で合わさっていたり…本人もお姫様気分だったのでしょう。


とても堂々と弾けました。
わたしもそんな娘に助けられて、連弾も楽しく弾けました。
演奏が終わったあと「一回だけまちがえてしまったけど、すぐにまた
弾けたから大丈夫だったかなぁ」なんてことを言うので、
「まちがえただなんて分からないくらい、いっしょに楽しく弾けたよ」
と言うと、弾んだ笑顔がぴょんっと戻ってきました。


わたしが小さい頃は苦手だった、ピアノのレッスン。
でも、母とピアノのレコードを聴くのは大好きでした。


夏休みのプールが終わって家に帰ると、母が焼いているケーキのにおいと
アツアツのオーブンの熱気。
そして、開け放した窓を気にしながら聴いた、ショパン英雄ポロネーズ


今日、最後に、ピアノの先生が弾いたのは、その英雄ポロネーズでした。
レコードの音とは少し違い、先生から湧き出る力強い音と、その風景を
想像させてくれるメロディ運びに、嬉しさと懐かしさがこみ上げてきました。


隣でいっしょに演奏を聴いていた母も、そんなふうに感じていたかしら。
帰りの車のなかで、昔聴いた英雄ポロネーズと先生の英雄ポロネーズ、どちらも
英雄ポロネーズでどちらもすてきねぇ、なんてこと、話して帰りました。
でも、あの夏の風景が蘇ったのは、わたしだけだったかもしれません。


また、ピアノの思い出がひとつ、ふたつ、と増えました。